第41回 全国豊かな海づくり大会 兵庫大会 ~御食国ひょうご~

豊かな海とは?

瀬戸内海の移り変わり

1960年代~1970年代 高度経済成長がもたらした弊害

赤潮の発生

赤潮の発生

出典:(公社)瀬戸内海環境保全協会

高度経済成長期、日本経済は急速に発展し、瀬戸内海沿岸地域においても都市化、工業化が進み、人々に生活の豊かさをもたらしました。

一方、工場の産業排水や家庭の生活排水が河川を通じ海に大量に流れ込み、水質汚染が深刻化するとともに、海水中の窒素やりんの濃度が過剰となる富栄養化が著しく進行しました。これに伴い、プランクトンが大量に発生し、赤潮などの被害を引き起こしました。1972年に播磨灘を中心に発生した大規模赤潮は、養殖ハマチが大量に死亡する漁業被害をもたらし、瀬戸内海は「瀕死の海」といわれました。また、工業用地確保のため自然海岸の埋め立てが急速に進み、魚介類の育成の場となる干潟や藻場が数多く失われていきました。

1970年代~1990年代 きれいな海を目指した取組

赤潮の発生など富栄養化に伴う被害を防ぐため、国は1970年に水質汚濁防止法、1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法、1978年には同保全特別措置法として恒久法となり、COD(※化学的酸素要求量)や窒素、りんの流入負荷削減などの環境保全対策を進めました。また、工場等には排水処理施設が導入され下水道も普及しました。

この結果、1980年代以降、兵庫県沿岸の瀬戸内海では海水中の窒素やりんの量が減少し水質が大きく改善したため、赤潮発生件数も減少しました。

※化学的酸素要求量・・・水質汚濁の指標のひとつ。CODの値が大きいほど水中の有機物が多いことを示し、水質汚濁の程度も大きくなる。

兵庫県瀬戸内海の窒素やりん濃度の推移

兵庫県瀬戸内海の窒素やりん濃度の推移

出典:公共用水域水質常時監視結果(兵庫県)より作成。濃度は、瀬戸内海(兵庫県)の環境基準点の年平均値を平均した値。

※全水域の平均値は「播磨灘北西部」と比較して、「大阪湾内」等の濃度が高い水域を含んでいるため、高い数値となっています。

兵庫県瀬戸内海の赤潮発生件数

兵庫県瀬戸内海の赤潮発生件数

瀬戸内海の環境保全資料集(公社)瀬戸内海環境保全協会より作成。延件数は、複数の灘及び月にまたがるものを各々計上した値。大阪湾、播磨灘、紀伊水道を合計。

2000年代~2010年代 新たな課題~漁獲量の減少と魚介類の異変~

色落ちした養殖ノリ

色落ちした養殖ノリ

環境保全対策等により、海水中の窒素やりんの量が減少し、水質が大きく改善された一方で、1990年代後半頃から兵庫県沿岸の瀬戸内海の漁獲量が減少するようになりました。

当初は、魚介類の獲りすぎがその原因ではないかと考えられ、漁期の短縮などの対策が行われましたが、漁獲量は減少し続けました。

さらには、以前より痩せた魚が多くなったり、養殖ノリの色落ちが頻発したりするなど、様々な異変が見られるようになりました。

漁獲量の減少や魚介類の異変には、窒素やりんの濃度が大きく関係していました。これらは、海水中に量が多すぎると赤潮の発生などの被害を引き起こしますが、食物連鎖の底辺を支える植物プランクトンの栄養となるため、海の生物には不可欠なものです。このため、生態系を支える海の栄養の減少により、食物連鎖を通じ、魚介類の減少に影響が及んでいます。今、瀬戸内海では海の栄養となる栄養塩(窒素やりん)が不足し、貧栄養化が進行しています。

海の生態系ピラミッド

海の生態系ピラミッド

兵庫県瀬戸内海の漁獲量と窒素供給量の推移

兵庫県瀬戸内海の漁獲量と窒素供給量の推移

出典:漁業・養殖業生産統計(農林水産省)より作成。窒素供給量は、昭和54年、59年(兵庫県)、平成元年以降は発生負荷量管理等調査(環境省)による値。

2010年代~現在 豊かな海の創出に向けて

兵庫県をはじめとした沿岸自治体は、2004年から貧栄養化が進む瀬戸内海の現状を踏まえた新たな環境保全対策を求め活動を行いました。豊かな瀬戸内海とするため141万人の署名を国に提出するなどの粘り強い取組の結果、2015年10月に瀬戸内海環境保全特別措置法が改正され、豊かな瀬戸内海を目指すという基本理念が新たに設けられました。

兵庫県では2019年10月に「環境の保全と創造に関する条例」を改正し、全国初の取組として海域の栄養濃度について、窒素0.2mg/L、りん0.02mg/Lを下限(※)とする水質目標値を定め、環境基準(上限値)と水質目標値(下限値)の範囲内となるよう水質を適切に管理することとしました。

私たちは今後も豊かで美しい瀬戸内海を将来に引き継いでいくため、様々な施策や活動に取り組んでいきます。

※下限値(窒素0.2mg/L、りん0.02mg/L)・・・これを下回ると、生物生産性が低いため、漁船漁業には適さないとされている。